箸はあらゆる食器類の中できわめて古い歴史があります。
人類が火を利用して食物を焼き、煮て、炊いた物を食べるようになり、熱い食べ物を火中より器に移したり、器から口に運ぶために 突き刺す道具やすくう道具、挟む道具を考案した結果で現在の箸の原型が出来たと思われます。
文献に記された箸に、十八史略所載の中国の殷の時代のちゅう王の象箸(象牙製)があります。
十八史略の宋微子世家に、殷のちゅう王が贅沢な象牙の箸を作らせたことを叔父の其子が諌めて、高貴な象牙の箸を用いるようでは 今に玉杯を作り、これを伴って長袖を着て、高楼広室で贅を尽くして、天下を傾けるだろうと嘆じたということです。
わが国の古事記には、スサノオノミコトが出雲の国の簸川にある鳥髪の地で、その川に箸(古事記では波乃と記してある)の流れ下るを見て、上流に人ありきとして遡って行き、ヤマタノオロチを切って天ノムラ雲剣を得たと言う古事記に箸が現れています。
4000年前の殷の世に、既に豪華な象牙の箸が作られていたとすれば、実用的な木製や竹製の箸は遥かにその以前より広く普及していたとおもいます。
また、我が国の古事記や日本書紀にも記されているように、箸は古く神代の時代より用いられたものと考えることが出来ます。